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* 中性子過剰核での核構造変化の実験研究 [#k293f36c]

**単一粒子状態研究を通した核構造変化の研究 [#dc2738e4]
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陽子と中性子からなる複雑な量子多体系である原子核を記述する言語として殻構造があります。近年の研究から、天然に安定に存在する原子核に、中性子を付加していくと、殻構造が大きく変化することが分かってきました。
我々は、この核構造変化のメカニズムの解明を目指しています。核構造変化の結果に直接結びつく単一粒子状態の変化を実験的に調べ、変化を促す核力の性質を実験的に明らかにすることを目指しています。~
CNSで開発しているOEDOビームライン、また世界中の低エネルギーRIビーム施設に於いて、我々が開発したアイソバリックアナログ共鳴逆運動学測定法で以て展開していきます。
CNSで開発しているOEDOビームライン、また世界中の低エネルギーRIビーム施設に於いて、我々が開発したアイソバリックアナログ共鳴逆運動学測定法で以て展開していきます。|

**対相関の研究 [#qab663af]
原子核内では、2個の核子がスピン・パリティ0+のペアーを組み、相関を持ちながら運動しています。
このような相関のことを対相関といい、原子核を理解するために無くてはならない要素です。
例えば、多くの核種において原子核表面で超流動状態が実現していることが知られており、この現象も対相関によってもたらされていることが分かっています。
しかしながら、自然界に存在しない中性子過剰な原子核中において、この対相関の性質がどのように変化していくのかはほとんど分かっていないのが現状です。

しかしながら、自然界に存在しない中性子過剰な原子核中において、この対相関の性質がどのように変化していくのかはほとんど分かっていないのが現状です。~
中性子過剰においては、金属超伝導を記述するBCS理論に基づく通常の対相関に代わって、ボーズアインシュタイン凝縮的な対相関が出現することが理論的に予測されています。
類似の現象は近年冷却原子系において発見され、現在注目を集めています。我々は異なるエネルギー階層間での同現象のユニバーサリティを検証することを目指し、研究を進めています。
実験の一つの手法として、三重水素からの2中性子移行測定を目指しており、そのための三重水素標的を富山大水素同位体科学研究センターと共同で開発しています。

**変形共存現象の研究 [#o2788848]
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三重水素標的は、上記、中性子過剰核での核構造変化の原因の一つとして、球形と変形状態が量子的に縮退する、変形共存現象の研究も可能にします。~
例えば、Zr同位体では球形から突然変形状態になる量子相転移が起こっていると考えられ、注目を集めています。この量子相転移では、基底状態が変形~
になった時には、球形状態は励起状態になったと予言します。この量子相転移の原因解明を行うためにまず、変形共存現象を明らかにしていきます。
になった時には、球形状態は励起状態になったと予言します。この量子相転移の原因解明を行うためにまず、変形共存現象を明らかにしていきます。|

*軽い不安定核の低エネルギー核反応メカニズムの解明 [#b1769d5e]
如何に未知の原子核を創造するか。中性子ドリップラインは、核力が中性子を束縛する限界であり、その限界を決定することは、我々の核力の理解の検証となります。しかし、残念ながら中間エネルギーの入射核破砕反応、核分裂反応でアクセスできる領域は限られれます。これらは10-21秒単位の早い反応です。一方、それよりも3桁以上遅い多段階反応である核融合反応、多核子移行反応では、過剰中性子、大変形度、弱束縛性から、新しい原子核を創造する方法があるかもしれません。中性子過剰核での遅い反応を研究します。
如何に未知の原子核を創造するか。中性子ドリップラインは、核力が中性子を束縛する限界であり、その限界を決定することは、我々の核力の理解の検証となります。しかし、残念ながら中間エネルギーの入射核破砕反応、核分裂反応でアクセスできる領域は限られれます。これらは10^-21秒単位の早い反応です。一方、それよりも3桁以上遅い多段階反応である核融合反応、多核子移行反応では、過剰中性子、大変形度、弱束縛性から、新しい原子核を創造する方法があるかもしれません。中性子過剰核での遅い反応を研究します。

* 極限回転状態の生成 [#b1f4d520]
*極限回転状態の生成 [#b1f4d520]
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原子核に膨大な角運動量を加えていくと、遂には遠心力がまさって核分裂を起こすと考えられます。その様な状態は、我々が知る核力と、角運動量による力が拮抗する領域であり、したがって、極限状態化での核力を研究することになります。

その様な極限状態として、原子核が大きくラグビーボール型に引き伸ばされて高速回転している、ハイパー変形状態が1980年代に予想されましたが、まだ発見には至っていません。反応によって例え生成されたとしても、その生成率はごく小さく、他の状態から分別することができないためと考えられます。

そこで、我々は、効率よく回転状態を作るために、半減期31年で、16+という高スピンを持ち回りつづける178m2Hf状態を人工的に大量に作り、それを標的とすることで、より高速回転状態を選択的に生成し、ハイパー変形状態探索を目指すことにしました。理研AVFサイクロトロンから供給される大強度4HeビームをYb標的に8時間照射し、178m2Hfを0.01 ng生成することに成功しました。標的、およびビームタイムを長くすれば、実験に使えるマクロな量になることは確実です。さらに究極的には、将来には究極の変形状態ともいえるトーラス型(ドーナツ型)原子核の生成を目指す。

* 高レベル放射性廃棄物の低減化を目指した核変換データの取得 [#ua821731]
*高レベル放射性廃棄物の低減化を目指した核変換データの取得 [#ua821731]
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原子力発電などで生じる高レベル放射性廃棄物の処理・処分の問題は、日本のみならず世界的な問題です。
この問題を根本的に解決できる有力な方法として、長寿命放射性核種を短寿命もしくは安定な核種に変換させる方法(核変換)があります。
この技術の確立を目指して、我々は、その基盤を支える核変換反応のデータを取得しています。

核変換で生成される核種は、反応を起こす粒子の種類やエネルギーに大きく依存します。したがって、多種多様な核変換データを取得し、効率的な核変換法を模索する必要があります。
理化学研究所のRIビームファクトリー(RIBF)では、長寿命核種をビームとして生成することができます。
さらに、我々が開発したRIビーム減速・収束装置「OEDO」の導入により、光速の約10%から70%までの幅広いエネルギー領域でビームを制御できるようになりました。
これにより、今後、多種多様な核変換データを取得していく予定です。

*鉄よりも重い元素起源の研究 [#b1769d5e]
鉄よりも重い重元素は、r過程とよばれる中性子捕獲とbeta崩壊を爆発的に繰り返して、一気にウランまで合成すると考えられています。長年超新星爆発がその天体であると考えられてきましたが、現在の核データを元に計算すると、必要な中性子密度がどうしても不足して行き詰ってました。中性子連星合体が、代わりに注目されて始めた時、重力波によるこの中性子連星合体が観測され、俄然盛り上がっています。一方で、中性子連星合体は、宇宙初期には起こりなえないにもかかわらず、初期天体でr過程生成での残留核が観測されるなど、未だ状況は混とんとしており、核データの重要性が増しています。上記、高レベル放射性廃棄物の核変換データ取得で行っている研究では、中性子捕獲反応断面積が評価地に比べて、100倍異なることもあることを示しました。元素起源の解明に繋がる、宇宙での核反応率に関係する実験研究を推進します。


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