中性子過剰核での核構造変化の実験研究

単一粒子状態研究を通した核構造変化の研究

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陽子と中性子からなる複雑な量子多体系である原子核を記述する言語として殻構造があります。近年の研究から、天然に安定に存在する原子核に、中性子を付加していくと、殻構造が大きく変化することが分かってきました。 我々は、この核構造変化のメカニズムの解明を目指しています。核構造変化の結果に直接結びつく単一粒子状態の変化を実験的に調べ、変化を促す核力の性質を実験的に明らかにすることを目指しています。CNSで開発しているOEDOビームライン、また世界中の低エネルギーRIビーム施設に於いて、我々が開発したアイソバリックアナログ共鳴逆運動学測定法で以て展開していきます。

原子核内でのBCS-BECクロスオバーの探求

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上記、中性子過剰核での核構造変化の原因の一つして、球形と変形状態が量子的に縮退する、変形共存現象があげられる。一方で、両者間の遷移は小さいために、実験研究は進んでいない。未発見の変形共存現象を実験で明らかにすることを可能にする、三重水素標的を富山大水素同位体科学研究センターと共同で開発している。将来的には、(t,p)反応を測定することで、中性子過剰核での変形共存現象を明らかにする。また、この三重水素標的は、近年冷却原子系で発見されたBCS-BECクロスオーバーを、より少数量子である原子核中で探索を可能にするツールとなる。

軽い不安定核の低エネルギー核反応メカニズムの解明

如何に未知の原子核を創造するか。中性子ドリップラインは、核力が中性子を束縛する限界であり、その限界を決定することは、我々の核力の理解の検証となる。しかし、残念ながら中間エネルギーの入射核破砕反応、核分裂反応でアクセスできる領域は限られる。多段階反応である核融合反応、多核子移行反応および、中性子過剰核ならではの、過剰中性子、大変形度、弱束縛性を駆使して新しい原子核を創造する方法を確立する。

極限回転状態の生成

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原子核に膨大な角運動量を加えていくと、遂には遠心力がまさって核分裂を起こす。 その様な状態は、我々がしる核力と、角運動量による力が拮抗する領域であり、 したがって、極限状態化での核力を研究することになる。

その様な極限状態として、原子核が大きくラグビーボール型に引き伸ばされて 高速回転している、ハイパー変形状態が予想されているが、まだ発見には至っていない。 反応によって例え生成されたとしても、その生成率はごく小さく、他の状態から分別することが できないためと考えられる。

そこで、我々は、効率よく回転状態を作るために、半減期31年で、16+という高スピンを持ち回りつづける178m2Hf状態を人工的に大量に作り、それを標的とすることで、より高速回転状態を選択的に生成し、 ハイパー変形状態探索を目指すことにした。さらに究極的には、将来には究極の変形状態ともいえるトーラス型(ドーナツ型)原子核の生成を目指す。


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