・我々の身の回りには、様々な種類の元素が存在しています。
水素、ヘリウムといった軽いものから、炭素、酸素のようなもう少し
重いもの、鉄などの金属、金やウランといった非常に重いものに至るまで、
多様な元素は、なぜ地球上に存在できているのでしょうか?
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・ある元素が他の元素に変わるには、 その原子の中の原子核が変わる必要があります。 しかし、元素を変化させるのは、容易ではありません。 古来、ある元素を他の元素に変えるということは、 いわゆる錬金術として研究がなされてきました。 特に、鉛のような「卑金属」を、金のような 「貴金属」に変えるため、長年にわたる研究が 行われました。 錬金術は、化学の進展には一定の貢献がありましたが、 主目的であるはずの元素の変換においては、 具体的な成果が得られずに終わりました。 |
・19世紀(例:ジョン・ドルトンの原子説)においては、元素は
それを構成する原子の種類によって決まる、ということが
理解されてきましたが、ある元素が他の元素に変化するという
ことは起こり得ないという説が主流でした。
・20世紀に入ると、加速器を使用し、人工的に原子核反応を起こし、 他の元素に変えることができることが分かりました。 また、初期の放射線の研究によっても、ある種の重い原子が 放射線を出すのは、その原子核が「崩壊」を起こし、別種の原子核に 変わるためである事が分かりました。 すなわち、ある元素が他の元素に変わるという現象は、実は 自然の中でも日常的に起こっているということが示されました。 |
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・核物理の研究が進んだ結果、 地球には、自然に軽い元素が重い元素を生み出すような 環境が無いということが明らかになりました。 一方、太陽の中では、核融合と呼ばれる反応により、 水素がヘリウムに変わるという事が、実際に起こっています。 これは元素合成の第一歩として重要です。 しかし、地球上に存在する多様な元素を作るには、太陽の中では 不十分であることも分かりました。 地球の様々な元素は、宇宙のどこかで一旦生成された ものがまき散らされ、今の地球を作る材料に再利用された、 というのが正しいと思われるようになりました。 しかし、宇宙の他の天体では、重い元素に至るまでの 元素合成が可能なのでしょうか? |
・1940〜1950年代、核物理と天文学の研究の進展から、 全ての元素の起源を説明する大まかな理論モデルが生み出されました。 これは非常に画期的なものでしたが、 そのモデルが本当に実現するかどうか、宇宙のどういった天体で起こるのか については不明な点が多くありました。 現在に至るまで、元素合成の理論モデルは、 新たな理論に基づいて修正を受けたり、 核物理の実験によって検証がなされたりした結果、より現実的で 精密なものへと変わり続けています。 例えば、金やウランといった重い元素の合成には、宇宙で重い天体が起こす 爆発、「超新星爆発」が深く関わっているようであるいうことも分かってきました。 しかし、宇宙の星や爆発現象を地上で再現して検証するには、非常な 困難が伴う場面も多く、未だ不明な点が多く残されているのも事実です。 我々も、元素合成の理解をより完全なものにするために、 地道な努力を続けていきたいと思います。 |