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テルル化カドミウム半導体 ガンマ線検出器

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概要

近年、次世代のガンマ線検出器として、よいエネルギー分解能を持ち高い検出効率を持つ新しい検出器のひとつとしてテルル化カドミウム(CdTe)が注目されています。この半導体検出器は、波形解析をすることによって、ガンマ線を測定した位置を正確に求めることができ、今後のガンマ線イメージングの分野などにも応用が期待されています。

テルル化カドミウムとは

CdTeは半導体の一種で、比較的大きな元素番号をもつ物質(Cd;Z=48, Te;Z=52)から作られています。ガンマ線は元素番号(Z)が大きい物質ほど吸収率が高いため、CdTeは高い検出効率を持ちます。これまでガンマ線検出器としては、おもにゲルマニウム半導体検出器やヨウ化ナトリウム(NaI)が広く用いられてきました。ゲルマニウム(Ge;Z=32)は非常に分解能が高い(0.1%程度)反面検出効率が低く、一方でヨウ化ナトリウム(Na;Z=11, I;Z=53)は検出効率が高い反面分解能がよくない(8%程度)、という特徴がありました。CdTeは高分解能・高検出効率を達成する次世代の検出器として期待されています。 CdTeはX線検出器として宇宙分野や医療分野において実用化がされていますが、ガンマ線検出器として十分な容積を持つ大型の結晶を作りだすことが難しく、ガンマ線検出器としての利用はほとんどされていませんでした。しかし、近年の技術開発により比較的大きな結晶を作ることが出来るようになり、実用化に向けた開発研究が期待されています。

cdte.jpg
CdTe検出器

波形解析によるガンマ線の検出位置の導出

一般的な半導体ガンマ線検出器では、ガンマ線が半導体結晶内に入ると、一定の確率で相互作用を起こし電子と空孔の対を作ります。この電子・空孔対が結晶にかけられた電場によって移動すると、電極に誘起電荷が生じます。この誘導電荷の量を測ることによって、検出したガンマ線のエネルギーを知ることができます。この際、電極に生じた誘起電荷はパルス状になっているため、このパルス波形を解析することによって、エネルギーだけでなく、ガンマ線を測定した位置の情報も同時に知ることができます。波形解析によるガンマ線の検出位置の導出という手法は、GRAPEでも使われているもので、将来的にはガンマ線イメージングなどの産業応用が期待されている新しい技術です。 大型CdTe結晶では、ガンマ線によって生成する電子と空孔の結晶内の移動速度が極端に違うため、ガンマ線の検出位置による波形の違いが顕著に現れます。そのためゲルマニウムに比べ非常に良い精度でガンマ線の検出位置を知ることができます。(位置分解能はGeでおよそ3mm、CdTeは1mm以下)

CdTe検出器の性能

我々のグループで現在までに開発を行ったCdTe結晶は、大きさが10x10x5(mm)というものです。この検出器を用いたガンマ線測定を行い、位置分解能1mm以下、エネルギー分解能10%(FWHM, for 662keV)という性能を達成しています。

参考文献


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Last-modified: Fri, 09 May 2008 16:48:50 JST (5824d)