SHARAQビームライン用 低圧動作型ドリフトチェンバーの開発

概要

SHARAQスペクトロメーターのビームラインにおいて、不安定核ビームの軌道をモニターする位置検出器の開発を行っています。高精度の原子核反応を行うため、不安定核ビームの標的への入射角度を精密に測定するために、実際にビームがゞのような軌道を描いてビームラインを通過したかを理解する必要があります。

SHARAQスペクトロメーターでは、RIビームを用いた原子核反応による実験が行われます。私達は、分散整合型ビームラインにおいて、RIビームの入射角度を高精度に測定する装置(低圧動作型多芯線ドリフトチェンバー)を開発しています。実際に、ビームがどのような軌道を描いてビームラインを通過したかをモニターするための位置検出器です。右の絵は、私達が実際に開発している装置の概念図を表しています。

目標とする性能

  • 角度分解能 1 mrad以下
  • 検出効率 95 %以上
  • 計数率 1 MHz程度

角度分解能は、検出器を低物質量化することで、多重散乱の影響を最小限に抑えることにより可能となります。検出効率は、一般的に高い感度を持つワイヤ−チェンバ−を用いることで実現できます。そして、測定するRIビ−厶は数 cm程度の拡がりを持つため、複数のワイヤ−で構成されている検出器では、1本あたりの計数率は、全体での計数率の1/10となる。このため、強い強度のビ−厶に耐えることが出来ると考えています。

検出器の構成

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 この検出器は、6層の面で構成されています。正面からカソード、アノード、カソードの3層で1組となっていて、これを90度回転した面が奧にあります。正面と奧のカソード面はストライプ状になっており、ディレイラインと接続してあります。カソード面では、ディレイラインを用いて信号を読み出します。内側のアノード面は、ポテンシャルワイヤーとアノードワイヤーが交互に並んでいます。ポテンシャルワイヤーは、電場を形成するために用いられます。アノードワイヤーは、信号を読み出すために用いられます。そして、読み出されたカソードとアノードの信号を用いて検出器を通過したビームの位置を測定することが出来ます。この検出器に用いられるガスは、イソブタンです。ガスの圧力は大気圧の1/10程度です。一般的に、高エネルギー実験や原子核実験で用いられているドリフトチェンバーでは、ガスの圧力は大気圧です。しかし、角度を精度良く測定を行う際に、多重散乱の影響を十分考慮しなくてはいけません。多重散乱の影響を最小限に抑えるため、ガスの圧力は低くしました。

参考文献

  • A.Saito et al.: CNS Report. 2006 (2007) 67.

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