東京大学 原子核科学研究センター

Center for Nuclear Study, The University of Tokyo

宇宙核物理

ビッグバン元素合成

宇宙はビッグバンと呼ばれる高温・高密度状態から始まったと考えられていますが、 ビッグバンの瞬間から3分後には宇宙で最初の元素合成、ビッグバン元素合成が起こり、 後の宇宙の星の材料が作られます。この時作られる元素は主に水素、ヘリウム、そして少量のリチウムです。 ビッグバン元素合成はシンプルな過程でありながら、未だ理解されていない点があり、特に、 観測されているリチウム元素の存在量を現在の理論モデルで説明できないという大きな問題があります。 この問題は世界中の研究者を悩ませていますが、元素合成反応の理解が十分でない可能性があり、 CNSでは特に、7Be(ベリリウム-7)原子核と中性子、重陽子の反応をビッグバン元素合成温度で研究しています。(山口研究室)

X線バーストと不安定核反応

X線バーストは宇宙で最も頻繁に起こる熱核反応による爆発現象と言われています。 様々なX線バーストに対し、爆発時の光量(X線の量)の時間推移が観測されていますが、 その時間推移がどのように起こるかの理解は十分ではありません。 その理由の一つには、X線バーストが高温に達するため、不安定核反応を含む 陽子過剰核の元素合成(rp-process, αp-process)が重要となってきますが、 不安定核反応の実験データが乏しく、反応率の不定性が大きいことがあります。 CNSでは不安定核分離装置「CRIB」を使い、不安定核を含む核反応の理解を進めています。(山口研究室)

銀河ガンマ線とアルミニウム-26原子核

宇宙からやってくるガンマ線の観測技術の進歩により、銀河から大量のアルミニウム-26原子核由来のガンマ線が 放出されていることが理解されるようになりました。アルミニウム-26は比較的長寿命の不安定核で、 地球上にはほとんど存在していませんが、銀河の星の中には存在し、現在の宇宙でも元素合成が行われて いることの証拠となっています。しかし、銀河の中でどのような天体がその源となっているかは 明らかではありません。また、アルミニウム-26はアイソマー(核異性体)と呼ばれる状態が存在し、 問題を複雑にしています。CNSではアルミニウム-26の核異性体不安定核ビームを生成することにより、 ユニークな反応研究を行っています。(山口研究室)

重元素の起源 -超新星爆発 vs. 中性子星連星合体

鉄よりも重い重元素の起源は人類の未解決の物理問題の一つです。これらの重元素は中性子捕獲反応と β崩壊で作られています。金や白金を宇宙で作るには、爆発的環境を必要とし中性子密度は>1020/cm3、 温度は109K以上が必要です。このような環境下だと、わずか数秒で水素からウランまでを合成します。 この元素合成過程はr過程と呼ばれ、超新星爆発が候補と考えられていましたが、現在のシミュレーションでは ウランまで作ることができません。最近、中性子星連星合体後に、ランタノイド元素が間接的に観測され、中性子星 連星合体も候補にあがってきました。このような爆発的状況だと、自然には存在しない中性子過剰核の核反応が律速となっています。 しかし、中性子、および中性子過剰核両方、反応率は理論によって二桁以上変わっています。我々は、 放射性核廃棄物の消滅手法研究で開発した新手法を用い、この反応率を評価し、重元素起源の解明を目指します。(今井研究室)