東京大学 原子核科学研究センター

Center for Nuclear Study, The University of Tokyo

大田晋輔 (助教)

Posted on 27 Aug, 2019

核物質の物性

みなさんの身近にある太陽は、陽子が10の57乗個(1のあとにゼロが57個続く、10阿僧祇)集まってできた大きなガス状の球体です。 夜空に輝く星たちも同様の構成をしていますが、太陽の10倍以上の質量を持つ星たちはその一生を終える瞬間に大爆発を起こし、 残骸として中性子星と呼ばれる冷たく輝く星を生み出します。

中性子星は中性子がやはり10の57乗個程度集まっていると考えられていますが、その大きさは半径 10 km 程度で、太陽の70万kmと比較すると圧倒的にコンパクトな星になります。そのため、その密度は親指の先程の大きさで3億トン以上という想像もつかないほど大きな密度です。実はこの密度は原子核内部の密度とほぼ同じ密度なのです。したがって中性子星の内部では原子核内部で働く力と同じ強い力が重要な鍵を握ることになります。

中性子星の内部には物性でよく知られた超流動相や超電導相のほか、パスタ相、中間子凝縮相など強い力特有の相が現れることが予言されていますが、なぜそのような相が発現するのか?実際にはどのように発現しうるのか?など決定的なことはわかっていません。 また、中性子星の重さと半径を結びつける状態方程式は、原子核物理と天体観測の両面から決定するための精力的な研究が行われていますが未解決の問題です。

これらの問題は強い力に基づくものであるため、原子核の構造・ダイナミクス研究こそが決定的な情報を与えうるものです。

私はこの問題に挑戦するため、

  • 原子核の振動モード(音色)
  • 原子核内のさまざまなクーパーペア(量子凝縮)

に着目して、状態方程式や物質相の解明に乗り出しています。

すでにこれらの研究の鍵を握る原子核反応三次元カメラであるアクティブ標的の基礎開発を終えており、理化学研究所 RIBF、放射線医学研究所 HIMAC、東北大学 CYRIC、大阪大学 RCNP などでの実験を計画しています。

有限系での量子現象に興味のある方、中性子星の内部を地上実験で解明してみたい方、また、原子核反応三次元カメラの高度化に興味のある方、 一緒に研究をしてみませんか?